遺伝子の組み合わせで色を変えるパプリカ
白い唐辛子の遺伝子はいかに?
今回は、パプリカの話です。パンにパプリカを使うことはあまりないですが、惣菜パンやサンドイッチの具だと少しなじみがあると思います。パプリカは辛くない唐辛子の一種で、パプリカや唐辛子の色は、2つの遺伝子、C遺伝子とY遺伝子によって決まります。両方の遺伝子が正常だと果実色は赤になり、どちらかが壊れるとオレンジ色や黄色になります。同じように見えるオレンジ色のパプリカでも、品種によってC遺伝子、Y遺伝子のどちらが壊れているかが異なります。違う遺伝子が壊れたオレンジ色の品種同士を交配すると、その子供は両方の親から正常な遺伝子を1つずつ受け取るので赤になります。難しいですが、これは生物で習う、そして私が大学の講義で教えている、メンデルの法則による現象です。
私たちはいろいろな色のパプリカ、唐辛子の遺伝子を調べました。その結果、Y遺伝子の壊れ方がもっと激しくなると、黄色よりさらに薄いクリーム色になることを突き止めました。さらに、クリーム色よりももっと薄い白い唐辛子の遺伝子がどうなっているのかを調べたところ、その唐辛子は、壊れたC遺伝子と激しく壊れたY遺伝子の両方を持っていることが分かりました。両方の遺伝子が壊れた品種を見つけたのは世界初で、この成果は2016年にペルーで行われた国際トウガラシ学会で発表し、なんと最優秀賞をもらいました。遺伝子に様々な種類があり、それらの組合せで色が変わるというのは、まるでクレヨンや絵の具のようです。これからは、もっとたくさんの種類の遺伝子を探し出し、それらを交配して組み合わせて、それこそ24色セットのクレヨンのような様々な果実色のパプリカを作り出そうと考えています。
私たちが調べた白い唐辛子。C遺伝子とY遺伝子の両方が壊れている。
筆者:笹沼恒男
2018.8