今回はグルジアと小麦の話Part3です
グルジアを代表する郷土料理「キンカレ」
今回も、私が昨年学術調査に行ったグルジアの食べ物の話です。パンについてはお話ししましたが、他にも小麦を使った非常に印象的な食べ物がありました。それはキンカレ(ヒンカレ)という小麦粉の生地の皮で具を包んだ饅頭のような食べ物です。グルジアの代表的な郷土料理で、見た目は中華料理の小龍包に良く似ていますが、上の突起が大きいニンニクのような形をしています。味の方も小龍包にそっくりで、中は挽肉で、出来たてにかぶりつくと中の熱い肉汁がこぼれてくるところまで良く似ています。私はとても気に入り、調査中何度も食べました。現地の方に聞くと、キンカレの正しい食べ方はナイフやフォークは使わず、上の突起を手でもちひっくり返して、まず皮を破り中のスープを吸ってから本体を食べ、突起の部分は食べないそうです。具材の方は、小龍包と違いバリエーション豊富で、スタンダードの挽肉の他、きのこ、チーズ、ポテトなどがあり、その点では日本のおやきに似ています。
グルジアは文化の独自性が非常に強い国です。グルジア語は文字も文法も固有で、他のどの言語とも似ていないそうです。グルジアの伝統的な家は木造家屋で、民族衣装は風の谷のナウシカにモデルになったとも言われ、いずれも他では見られない独特なものです。一方で、キンカレのようにとても離れた地域と似た食べ物があります。これはおそらくシルクロード交易の影響でしょう。黒海と地中海に挟まれた、ヨーロッパと中東、アジアの中間に位置するという特徴から、歴史的に様々な文化の影響を受けたと思われます。独自の文化を持ちつつ、他の文明のものを取り入れていった文化・文明の交差点がグルジアなのかもしれません。
グルジアの代表的郷土料理であるキンカレ
筆者:笹沼恒男
2015.3