今回は国際コムギ遺伝学シンポジウムの話です
小麦研究者が集う最大規模の国際会議が横浜で開催されました
2013年9月に、横浜で「国際コムギ遺伝学シンポジウム」という会議が開かれ、私も参加しましたので、今回はそのお話しをします。この会議は、小麦研究者の国際会議としては最大規模のもので、5年に一度開催され、今回で12回目になります。前回は豪州、前々回はイタリアと世界各地で開催されており、日本で開かれるのは30年ぶりでした。会議で発表される内容は、遺伝子の話が中心ですが、品質の話や農家への普及の話など多岐にわたります。
今大会の重要な発表の一つが、小麦の全DNA配列が解読されたという話でした。これまでに、ヒトをはじめ多くの動植物の全DNA配列が解読されていますが、小麦はDNAの全長が約170億塩基で、イネの40倍、ヒトの5倍の長さと非常に長いため解読されていませんでした。今回報告されたのは、私たちがもっともよく使うパン小麦ではなく、その祖先でDNAの全長が短いタルホ小麦でしたが、それでも全DNA配列が解読されたことは大きな成果です。DNAは遺伝子の本体ですので、全DNA配列が解読されると、その生物がどのような遺伝子をもつかが全てわかることになります。それだけで小麦の全てが理解できるわけではありませんが、品質の向上、病害抵抗性など遺伝子が関わる研究が進むことが期待されます。
ちなみに、次回の開催地は今大会の参加者の投票によって決定されました。米国、オーストリア、中国の3カ国が立候補しましたが、最初の投票で中国が脱落し、決選投票で最有力と思われた米国が敗れオーストリアに決定しました。劇的な展開での開催決定に、おりしも五輪開催地の決定のような雰囲気で、一参加者に過ぎない私も、手に汗握る思いでした。
第12回国際コムギ遺伝学シンポジウムの会場入り口での著者とその学生。会場はパシフィコ横浜
筆者:笹沼恒男
2014.1