今回はキルギス共和国の麺の話です
中央アジア・キルギスで出会ったナンバーワンの麺料理
前回、私が学術調査で訪れたキルギス共和国のパンの話をしましたが、今回はキルギスの他の食べ物のお話しをします。キルギスを含む中央アジア諸国では、パンの一種であるナンが欠かせない主食ですが、それと並ぶ伝統食に、ラグマンという麺料理があります。これは、肉の入ったトマトスープを麺の上にかけた料理で、麺はパンと同じく小麦から作られており、日本のうどんによく似て、非常においしいです。一つ違うのは、この地域では箸を使わず、ラグマンもフォークやスプーンを使って食べます。麺文化は中国発祥で、シルクロードを通じ中央アジアに広まったのだと思いますが、そのとき箸文化までは伝わらなかったのでしょう。
その他に印象の残る麺料理として、ベシュ・バルマックという郷土料理がありました。これはラグマンに似た、麺の上に野菜と肉のスープをかけた料理ですが、麺が平たいきし麺状で、馬肉の腸詰が入っていました。遊牧民族であったキルギス人にとって、馬はもっとも大切な家畜でありパートナーでした。馬肉も特別な食材であり、ベシュ・バルマックは、祝い事や客人の接待など特別なときに食べる料理だそうです。私はレストランで食べたのですが、現地の人から、キルギスでナンバーワンの料理だ、と言って勧められました。味はラグマンにましておいしく、さすがに勧められるだけのことはありました。
また、馬といえば、調査中、遊牧民が路上で売っていたクムスという馬乳酒も飲みました。これは、臭いがきつくおいしいとは言えず、おまけに下痢になり数日苦しみました。海外でその土地の食べ物を食べるのは、文化を理解するために重要なことですが、馬乳酒だけにはご注意のほどを。
キルギスの伝統的な麺料理ベシュ・バルマック
筆者:笹沼恒男
2013.11