今回は硬軟質性の話です
小麦粉の性質を左右する殻粒の硬さに注目!
私は小麦の研究者ですが、DNAや遺伝子を調べるのが専門で、実際の小麦粉の性質を調べるということはあまりしていませんでした。しかし最近、やはり小麦を研究するなら、小麦粉の性質を調べなければいけないだろうと考えるようになり、それに関係する研究を始めています。小麦粉の性質は、穀粒に含まれるタンパク質・デンプンの質や量、穀粒の硬さなど様々な要素が関係しています。そこでまずは種子の硬軟質性に着目しました。これは文字通り穀粒の硬さですが、穀粒内の結晶構造が関わっており、隙間なく結晶構造を作っていると硬質、隙間があると軟質となります。大雑把にいうと硬質小麦はパン用、軟質小麦はケーキ用です。
一般的な硬軟質性の調査法は、穀粒を一粒ずつ潰しその圧力を計測する方法です。これにはSKCS硬度計という特別な機械が必要なため、パン用小麦研究の国内拠点の一つである広島県の近畿中国四国農業研究センターを訪れ、私がこれまでの海外調査で採集してきたロシアの北コーカサス地方やジョージアの小麦を調べました。大体、測定値45を境に硬軟質性が分かれますが、今回のサンプルには硬質性が多く、中にはパン小麦では滅多にない、値が75を超える超硬質性のものも混じっていました。これはパン用というよりも、パン小麦とは別種のパスタ用のデュラム小麦に匹敵する硬さです。このように硬い粒をもつパン小麦があったのは非常に驚きでした。今年は、これら超硬質性を示した小麦をたくさん栽培し、パンが作れる量を収穫するつもりです。パスタ向けともいえる超硬質のパン小麦でおいしいパンが作れるのか?パンを作った結果がでたら、また皆様にご報告しようと思います。
小麦の穀粒硬度を測定するSKCS硬度計
筆者:笹沼恒男
2016.5