今回は中国のパンの話です
蒸しパン、揚げパン、大麦パン… 中国は様々な種類をもつパン大国
今回も私が今年の8月に行った中国での学術調査の話です。私は職業がら、海外に行った際は、できるだけ小麦を使った現地の食べ物を食べるよう心がけています。小麦はもともと西アジアが起源ですが、紀元前2000年くらいには既に中国に伝わっていたと考えられています。そのため中華料理には麺を初めとする小麦を使ったものがたくさんあります。その中にはパンもありますが、中国のパンは小麦粉を練った生地を蒸した蒸しパンが主流です。お粥と一緒に朝食で毎日出てきましたが、饅頭(マントウ)という具のない蒸しパンがもっとも標準的です。また、同じ蒸しパンで生地をロールパン状にした花巻(ホアジュアン)というパンもよく出てきました。生地は小麦粉ですが、トウモロコシなど他の穀物の粉を混ぜる場合もあるようです。パンの定義は難しいですが、「穀物の粉に水を加え練った生地を加熱し固形物にしたもの。具が入る場合もある。」とすると、加熱には焼くの他に、蒸す、揚げる、茹でるもありますので、肉まんや小龍包、さらに餃子ですらパンの一種とみなすこともできます。そう考えると、中国は様々な種類をもつパン大国なのです。
私が行った青海省はチベット族が多く、漢民族とは異なった伝統食があります。その中の一つにヤク乳のヨーグルトを混ぜた生地を揚げたパンがありました。巴洛(バールオ)と呼んでいましたが、酸味のあるおいしい揚げパンでドーナツのような感じでした。またレストランでは、チベット族の主食である大麦から作ったパンもありました。パンは世界中で食べられていますが、麦が世界に広がるにつれ、その土地に合わせたパンが作られるようになったことを実感する旅でした。
中国の代表的な蒸しパンである饅頭(右)と花巻(左)
ヤク乳のヨーグルトが生地に練り込まれた揚げパン
筆者:笹沼恒男
2015.11