今回はハト麦の話です
実はトウモロコシに近い仲間のハト麦 西洋ではロマンチックな名前がついています
ハト麦と言えば、「はとむぎ、玄米、月見草」というお茶のCMのフレーズで有名です。お茶の他、雑穀としてご飯に混ぜる場合もあります。脂質、タンパク質、鉄分の量が他の穀類に比べ高く、栄養価に優れた穀物です。しかし、麦と名がついていますが、パンの原料にするという話はあまり聞きません。そもそもハト麦がどんな麦なのか知っている方は少ないでしょう。実は分類学的に言うと、ハト麦は麦ではありません。小麦、大麦と同じイネ科に属しますが、麦類とは縁の遠いトウモロコシに近い仲間です。若い頃の植物体を見ると、ハト麦とトウモロコシは区別がつかないくらいに似ています。名前の由来は、外国から渡来した穀物を「麦」と総称していて、ハトが食べるようなものだから、という意味でハト麦となったのだと思います。起源地である東南アジアでは、精白してお粥やご飯のようにして食べるそうです。他の雑穀同様、粉にして小麦粉と混ぜれば、パンやお菓子にも使えます。
ハト麦の実は、トウモロコシの粒よりもさらに大きい、殻につつまれた壺のような形をしています。ハト麦の野生祖先種はジュズダマという植物で、ハト麦によく似ていますが、名前はその実を使って数珠を作ったことに由来しています。一方、西洋ではもっとロマンチックな名がついています。英語でハト麦は、実の形を涙のしずくにたとえ、ヨブズ・ティアー(ヨブの涙)といいます。ヨブは旧約聖書に登場する人の名です。学名も、コイックス・ラクリマ-ヨビで、ラクリマ-ヨビはラテン語でヨブの涙という意味です。もし和名も涙麦などという名前になっていたら、ハト麦の印象も今とは全然違ったものになっていたことでしょう。
ハト麦の実。これを煎じてお茶にしたり、精白して食べたりする。形が涙に似ている?
筆者:笹沼恒男
2014.9